歩くよりも疲れず、走るよりも速く、
どこへでもスイスイと行くことができる自転車。
買い物や通勤・通学にも、お世話になっている人は多いのではないでしょうか。
そんな自転車が、どんな仕組みでできているか知っていますか?
もしも自転車を自分で作れって言われたら、
どうやってタイヤを回せばいいんだろう?
ブレーキのない自転車なんてすごく危ない!
でも、どうやってブレーキをつくればいいんだブゥ…
今回は『自転車』の仕組みについて説明していきます。
見るだけで仕組みを学べる解説『フル図解バージョン』はこちら↓
自転車の構造
自転車のそれぞれの部位には、どんな役割があるのでしょうか。
- 操作するためのハンドル
- 止まるためのブレーキ
- 荷物を入れるためのカゴ
- 自転車を動かすための2つのタイヤ
- タイヤを動かすためのペダル
- 座るためのイス
さらに荷物を載せる荷台や、自転車を止めて立てておくためのスタンド、
暗いところでも走れるようにするためのライトまで備わっています。
改めて見直してみると、
こんなにたくさんの機能が搭載されて、1台の自転車はできています。
自転車の仕組みを理解するために、まずはそれぞれのパーツと役割をじっくり見ていきましょう。
今回は最も一般的な『シティサイクル』の構造について解説していきます。
自転車のパーツ
自転車には、とてもたくさんのパーツが使われています。
なのでこの解説では、ぜんぶで3回の解説に分けて、くわしく説明していきますね。
今回はハンドル・ブレーキ・カゴの部分を見ていきたいと思います。
ハンドル
自由な方向へ操作できるハンドル。
ハンドルだけでも、たくさんのパーツが使われています。
さっそくハンドル周辺のパーツを見ていってみましょう。
ハンドルバー
カモメのような形をしていますね。
人の手で握って操作しやすいよう、こんな形をしています。
バーをかたむけることで、右や左へタイヤを動かし、方向を変えることができます。
ハンドルステム
ハンドルと自転車のその他の部分をつなげる棒。
ハンドルポストもふくめて『ハンドルステム』といいます。
『ステム』とは『軸』というような意味。
ハンドルポスト
ハンドルバーをはめる穴が開いている部分です。
『ハンドルステム』の一部であり、穴の部分を『ポスト』といいます。
クランプボルト
『ハンドルポスト』にはめたハンドルバーを固定するためのパーツ。
コの字型の固定具のことを『クランプ』と呼び、それにくっついてるボルトなのでクランプボルト。
ちなみに『クランプ』とはドイツ語で留め具という意味のようです。
ハンドルバーの取り付け方
『ハンドルポスト』についている『クランプボルト』を緩めると、
ハンドルバーを取り付けることができます。
ハンドルバーは曲がっているので、はめられないように見えるかもしれませんが、
曲がっているラインに沿って動かすと、ちゃんとはめることができます。
ボルトを緩めたことで、クランプが広がっているのではまる。
キャップ
ハンドルステムと他の部分を繋げるための、ボルトが入った部分を
保護したり見栄えよくするためのキャップ。
このキャップを取ると、ボルトが見えてきます。
引き上げボルト
ハンドルステムの中にある、長~いボルト。
内部から、ハンドルステムと他の部分をつないでいます。
ウス
引き上げボルトの一番下につける、ハンドルを抜けなくするためのパーツ。
カットしたちくわみたいな形をしていますね。
個人的な連想では、もしかして『おもちをつく臼』からきてる?と想像しています。
パーツのウスは『ななめウス』とも呼ばれているそうなので、「ななめじゃないウス」ときたら、おもちの臼しか浮かばない…ということで^^;
覚え方の参考までに、余談でした。解明しだい記載しますね。
引き上げボルトとウスでハンドルを固定している
なんでウスなんて必要なの?といいますと、
引き上げボルトを締めると、ウスが上にせり上がります。
接続部分の中で、ハンドルステムとウスは斜めに合わさって、
外側に強く押し付けられる力が働きます。
その強く押し付けられる力によって、ハンドルステムは固定されているのです。
ロックナット
ハンドルステムと『フォーク』という部位の接続部にあるパーツ。
内部にぐるぐるのミゾが入っていて、六角形の形をしています。
グリップ
ハンドルを人の手でより握りやすくするために付けるパーツ。
だいたいの自転車のグリップはゴムでつくられていて、
他にはシリコンやスポンジのゴムもあるようです。
グリップにはネジなどはなく、ただハンドルバーにはまっているだけになります。
もう捨ててしまうという場合は、カッターやはさみなので切って取り外してしまっても大丈夫です。
再利用したい場合は、スキマに細めの丈夫な棒や工具などをねじこんで、
それでも外れない場合は棒をねじ込んだスキマから、緩めるためのスプレーなどをしてスポッと外します。
けっこう力がいるようです。
ブレーキ
進んでいる自転車を止めることができる『ブレーキ』。
安全に走るための重要な機能ですね。
ブレーキはどんな構造をしているのでしょうか。
ブレーキレバー
このレバーを引くことで、自転車のスピードを落とすことが出来ますよね。
レバーを引くことにより、レバーについたワイヤーが引っ張られ、
ブレーキ本体を操作することができます。
左右のブレーキは、一般的な自転車の場合『右ブレーキが前のタイヤ』『左ブレーキが後ろのタイヤ』を止める役割をしています。
前と後ろのタイヤでブレーキの仕組みが違うので、ブレーキパーツの最後に説明しますね。
レバーホルダー
ブレーキレバーをハンドルバーにくっつけるためのホルダー。
バーに取り付ける部分は、『ハンドルポスト』と同じようにコの字型の『クランプ』になっていて、
クランプボルトを締めることで固定することができます。
ブレーキケーブル
ブレーキレバーを握ることでブレーキ本体を操作するためのケーブル。
細い管(アウターワイヤー)の中には、さらにワイヤーが通っていて、
中のワイヤー(インナーワイヤー)を引っ張ることによってタイヤのブレーキを制御しています。
アウターワイヤーの先は、『タイコ』という
ブレーキレバーに取り付けるための小さな金具が付いています。
前輪のブレーキ(リムブレーキ)のパーツと仕組み
ハンドルに付いているブレーキレバーの仕組みを見終わったので、次はタイヤ側の『ブレーキ本体』を見ていきましょう。
ハンドル右のブレーキバーを引くと、前のタイヤにブレーキがかかりますね。
ブレーキにも色々な種類があって、
実は一般的な自転車も、前輪と後輪でブレーキの種類が違います。
前輪に使われているブレーキの種類は『リムブレーキ』といいます。
ブレーキレバーからのびているワイヤーの先では、何が起こっているのでしょうか。
ブレーキアーム
タイヤを止めるためのゴムがついた、2枚のU字型の金属板。
1枚目(奥側)のアームにブレーキワイヤー(アウターケーブル)がつながっていて、
2枚目(手前側)のアームにケーブルの中のインナーワイヤーがつながっています。
2枚のアームの先には、タイヤを止めるためのゴムが装着してあり、
ワイヤーが引っ張られることでゴムがタイヤにあたり、ブレーキをかけられる仕組みです。
アジャスター
ブレーキワイヤーを調節するためのパーツ。
「アジャスター」とは英語で『調節装置』という意味。
インナーワイヤー
ブレーキワイヤーの中を通っている針金。
細い金属の線をよりあわせて、丈夫な線になっています。
先端にはワイヤーキャップがついています。
ブレーキレバーを引くことで、インナーワイヤーに繋がっている
ブレーキアーム(手前側)がうえに上がり、ゴムをタイヤに押し付けてブレーキをかけられます。
ボルト・袋ナット
2枚のブレーキアームをまんなかで留めているパーツ。
この部分が2枚を支えて、ブレーキをかけるゴムを操作することができます。
袋ナットという、ボルトを受ける側が丸くなっているナットがよく使われています。
袋ナットにすることで見た目がよくなったり、ボルトが突き出した部分の引っかかり防止にもなるようです。
前輪のブレーキは正面から目立つ部分なので、袋ナットがよく使われています。
ブレーキシュー
2枚のブレーキアームの先についているゴム。
タイヤを横から挟んで速度を落とすことができます。
リムブレーキがかかる仕組み
- ハンドルについている右のブレーキレバーを引く
- レバーからのびているワイヤーが引っ張られる
- リムブレーキのブレーキシューがタイヤのリムをはさみ、車輪の回転をおさえる
この時、リムブレーキはどんな動きをしているのでしょうか。
まず、ブレーキワイヤーは、2枚のブレーキアームにつながります。
アウターケーブルは奥アームのアジャスターに、
アジャスターから下はインナーワイヤーのみ、手前アームのボルトに繋がっています。
そしてブレーキレバーが引かれると、
手前アームのインナーワイヤーが上に引き上げられるのと同時に、
奥アームのアウターワイヤーのたるみがなくなり、下に引き下げる力が働きます。
この反対の向きに回転しようとする力で、タイヤをはさんで、ブレーキをかけています。
はさんだあと、アームはどうやって元に戻るのかというと、
アームの裏にはバネがついているので、ブレーキレバーの引きをゆるめると、バネの力で元の位置へ戻るのです。
前輪のブレーキをざっと見てみました。
実は『リムブレーキ』の中にも色々な種類があって、ここで説明しているブレーキの仕組みがすべてではありません。
今回は最もよく見かける『キャリパーブレーキ』というタイプの仕組みを説明をしました。
その他のリムブレーキにも、色々な見た目や仕組み、用途があるので
気になったら調べてみてくださいね。
後輪のブレーキ(ハブブレーキ)のパーツと仕組み
後輪のブレーキは『ハブブレーキ』といいます。
前輪のリムブレーキが『タイヤの外側を挟む』という止め方なのに対して、
後輪のハブブレーキは『タイヤの内側を締めつける』という止め方をしています。
リムブレーキとハブブレーキの特徴
前のタイヤ(リムブレーキ) | 後ろのタイヤ(ハブブレーキ) | |
ブレーキの強さ | ・ハブブレーキより強い | ・リムブレーキより弱い |
メリット | ・つくりが簡単なので交換しやすい | ・雨や風に強い |
デメリット | ・寿命が短い ・雨にぬれるとブレーキが効きにくくなる | ・長い坂道を下るとブレーキが効きにくくなる |
1番の理由はコスト(自転車を作るのにかかる費用)ですが、整備のしやすさも大きいといわれています。
両方ともリムブレーキだと、雨の日にどちらのタイヤもブレーキが弱くなってしまったりするので
安定性の面でも、前と後ろで違うタイプのブレーキを搭載しておくことで、補い合っているともいえます。
前輪と後輪の特徴がわかったところで、さっそく後輪の仕組みを見ていってみましょう。
ハブブレーキへのケーブル
前輪では、ブレーキ本体にすぐに繋がっているのに対して
後輪へのブレーキワイヤーは、車体の下に沿ってくぐらせてあります。
そしてペダルの下を通って、後輪のハブブレーキまでのびています。
ケーブルはジャマにならないよう、フレームの下側にケーブルガイドで固定されています。
ブレーキユニット
ハブブレーキの本体。
数字の「6」が横になったような形をしている鋼板製のパネルの内部には、
ブレーキシステムが組み込まれています。
ブレーキワイヤーに引っ張られた「バンド」と呼ばれる帯が、車輪の中心(ハブ)を締め付けてブレーキをかける仕組みです。
ブレーキドラム
タイヤに取り付ける円形のパーツ。
タイヤと連動し、ブレーキをかけられる側の役割を担っています。
ドラムを取り付け・外すために、専用の工具を引っ掛けるための穴です。
バンド
ブレーキユニットに固定されている、円形で金属製の帯。
摩擦材(ゴムなどの弾力のある材料)が貼り付けてあります。
レバー
L字型をしている金属板のレバー。
ブレーキワイヤーの引っ張られる力をバンドに伝える役割をしています。
ハブブレーキがかかる仕組み
- ハンドルについている右のブレーキレバーを引く
- レバーからのびているワイヤーが引っ張られる
- L字型のレバーとバンドが引っ張られ、ドラムを締め付けて車輪の回転をおさえる
この時、ハブブレーキはどんな動きをしているのか、見ていってみましょう。
まず、ブレーキワイヤーがL字型のレバーのはしを引きます。
すると、もうひとつの端についているバンドが引っ張られ、内側に締め付ける力が働きます。
タイヤと連動しているドラムを、摩擦材のついたバンドが締めつけることで、ブレーキをかけています。
あれはバンドがドラムを締め付けた時に鳴っている音なのです。
前輪と同じく、後輪のハブブレーキにも色々な種類があります。
今回は、安く販売されている自転車に多く見られる『バンドブレーキ』について説明しました。
ブレーキのかけ方の正解は1つではなく、
今ある方法より、もっと良い仕組みがあるかもしれません。
自分でオリジナルのブレーキを考えてみたりするのも、面白いかもしれませんね。
カゴ(バスケット)
荷物を入れることのできる便利なカゴ。
『バスケット』と呼ばれたりもします。
ハンドルステムに続いて、いくつかのパーツで取り付けられています。
カゴ
荷物を入れることができるカゴ。
ステンレスワイヤーなどで箱型に作られています。
ボルト・ナット
部品を取り付けるためのパーツ。
ぐるぐるのミゾがかみ合って、強い力で締め付けることができます。
座金(ワッシャー)
パーツとパーツの間に挟んで緩み止めになったり、
パーツを壊れにくくするための、輪っか状で平たい金属の板。
座金(ワッシャー)2
色や大きさが変わっても、役割は同じですが、
ロックナットの下にはまっているワッシャーは、少しだけ形が違います。
円形の一部にでっぱりがあって、
フレームの挿し口とぴったり合う形のワッシャーです。
切り欠きリング
『ステー』というパーツの上にはまっている、溝のある平たいナット。
切り欠きリングがあった場合は、『フックスパナ』という工具を溝に引っかけると回すことができます。
ステー
フレームにカゴを取り付けるための部品。
曲がった先のプレートに2つの穴が開いていて、
ボルト・ナット・ワッシャーでカゴを取り付ける。
このパーツだけで、カゴ全体を支えています。
カゴなし自転車は軽くなった分、走りやすさがアップしています。
荷物を運びたいか、速く走りたいかなど、目的に合わせてカゴの無いタイプもあるのです。
今回は自転車のハンドル、ブレーキ、カゴの仕組みを見てみました。
次回はフレームやイス周辺のパーツを見ていきます。
自転車の豆知識
もっと知りたい!と思っている人へ、おまけの豆知識です。
自転車はどうやってうまれたの?
世界で始めて自転車が誕生したのは、1817年のドイツでした。
『ドライス男爵』というドイツ人の発明家が、自転車の始まりとなる『ドライジーネ』という名前の自転車を作ったそうです。
ドライジーネはハンドルからタイヤまで木で作られていました。
まだペダルはなかったので漕ぐことはできず、足で地面を蹴って進んでいたようです。
その時代では、馬車で移動するのが普通だったので、
世話もいらず、速く移動できるドライジーネは、当時の人達の間で大流行したそうです。
昔の自転車はなんで前のタイヤが大きかったの?
『レトロな自転車』として、前輪がやたら大きな自転車を見たことはありませんか?
昔の自転車は『前輪駆動』といって、前の車輪に動力を伝えて動かしていました。
前輪駆動の自転車は、ペダルを1回こぐと、前輪の大きさの分だけ進みます。
つまり、前輪が大きければ大きいほど、1回こいだ時に進める距離が長いのです。
より速く、楽に走るためにと前輪の大きな自転車が開発されましたが、
乗りづらかったり、危険だったりして、現代まで普及はしませんでした。
日本では『ダルマ自転車』、外国では『ペニー・ファージング』などと呼ばれているようです。
今の時代、「壊れたらとりあえず修理屋さんに電話するか、お店に行けば買える」というとても便利な時代なので、使えることが当たり前になり、有難みも薄れがちです。
改めて学び直す必要なんてないのかもしれません。
けれどこの記事で、そのモノが作られるまでにどんな人々が関わって、どんな改善の積み重ねで今があるのかなど、なにかひとつでも気付きがあれば幸いです。